国内の建機市場は、公共工事が減少傾向にあるものの、中古車の海外輸出等によりストック台数が減少したこと、また更新時期での機械の入替、排ガス規制対応需要などにより前年度比11%増加と7年ぶりに好転し、ようやく「底打ち」したと見られます。一方、海外においても、中国市場は拡大継続、欧・米ならびにAPACは回復基調、加えて中東、ロシア地域での市場伸長など、総じて好調に推移しており、建設機械の輸出額は前年度比32%増加となりました。
この様な事業環境変化の下、当社は2003年度をコベルコ建機の「発展期」初年度と位置付け、「経営のスピードアップ」をモットーに、将来の収益力拡大・グローバル展開へ向けた事業基盤整備に鋭意取り組んでまいりました。
○ |
勃興する中国市場での積極展開 (生産・販売・サービス体制の拡充) |
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(1) |
豊田通商(株)との協同事業展開および戦略的な投資を行う合弁会社の設立、
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(2) |
中国第2工場設立への着手、
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(3) |
事業統括会社への出資・経営参画、
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(4) |
上海サービス拠点設立 など
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○ |
中古車専門会社の設立による国内および海外におけるストックビジネス強化 |
○ |
成長が見込める東南アジア地域の販売・サービス体制強化 |
○ |
米国Manitowoc(マニトワック)社とのクレーンメニューにおける相互OEM供給契約の締結 |
また、上記のマニトワック社との相互OEM供給により、クレーン事業の更なる基盤強化が図れ、新会社「コベルコクレーン(株)」発足へ向けた体制を整えました。
2003年度は、国内・海外需要が好調に推移する中で、特に伸長著しい中国における販売台数の倍増・シェア拡大や、国内事業の改善が、収益面で大きく貢献しました。
国内の新車販売では、レンタル会社向けを始めとする積極的な営業展開に注力するとともに、商品戦略として、業界初のオートアイドルストップ機能の標準装備や、金属リサイクルメニューの品揃え強化など、高まる環境ニーズをターゲットとした新機種を相次いで投入しました。
また、需要旺盛な中古車ビジネスを核としたストックビジネス強化や、海外生産向けCKD部品収益・技術料収入(ロイヤリティ)の拡大にも取り組みました。
これらの結果、2004年3月期(2003年4月~2004年3月)の業績は、前年度比で大幅な増収増益となりました。
<2003年度通期の実績> |
{単位:百万円、 ( )内は前年度比} |
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売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
当期純利益 |
連結 |
当期 |
183,987
(+16.8%) |
8,067
(+78.8%) |
6,150
(+149%) |
2,824
(+293%) |
前期 |
157,398 |
4,512 |
2,474 |
719 |
単体 |
当期 |
128,524
(+30.3%) |
3,910
(+112%) |
3,287
(+149%) |
2,121
(+410%) |
前期 |
98,619 |
1,843 |
1,321 |
416 |
連結の売上高では、海外事業が833億円(前年度比 +27.6%)、国内事業が1,006億円 (同 +9.2%)とともに増え、全体としては1,839億円(同 +16.8%)となりました。
また、財務面では、事業規模拡大に伴う運転資金の増加がありましたが、商社金融の活用による売上債権の流動化・棚卸資産の削減・事業利益などの資金創出により、これを吸収するとともに、中国事業への投資資金等を自己資金で賄う事が出来ました。
なお、配当については、昨年度を上回る配当率での実施を予定しております。
<ショベル事業について>
■ 中国
インフラ整備や都市開発の活発化で急拡大する中国市場を最重要エリアと位置付け、下記の諸施策を実践し、中国事業の基盤強化に取り組みました。
(1) |
浙江省杭州市に第2生産合弁会社『杭州神鋼建設機械有限公司』を設立。
2005年1月の生産開始を目指し、生産工場の建設に着手。
(2007年:目標生産台数=3,500台/年) |
(2) |
四川省成都市の生産合弁会社『成都神鋼建設機械有限公司』における生産能力増強 (年産3,500台体制を構築)。 |
(3) |
事業統括会社「成都神鋼工程機械集団」への出資による製販一体運営体制の強化。 |
(4) |
豊田通商(株)と合弁投資会社「コベルコ豊田通商建機ホールディングアジア株式会社」を設立。生産・販売・サービス・調達・物流等における協同事業展開を推進。 |
(5) |
中国全土をカバーする販売代理店網・サービス契約店の整備、拡充。 |
などを合弁事業パートナーと共に推進し、生産・販売およびサービス体制の強化を図りました。
2003年の中国における油圧ショベルの新車販売台数は、対前年比で倍増し、同時にシェアの向上も図れました。
■ APAC
ASEAN地域においては、需要が回復したインドネシアでの営業拠点拡充による大幅なシェアアップや、ベトナムでホーチミンに続く第2拠点としてハノイ事務所を設置するなど、流通強化に注力しました。
このような新車・中古車の販売およびサービス・部品供給の体制構築により、更なる新規需要の拡大と現地におけるブランド力の向上を図りました。
■ 欧州・米国
欧米におけるCNHとの合弁事業では、イタリアの生産・販売拠点「Fiat Kobelco」(フィアットコベルコ)への技術移転が順調に進展し、現地生産メニューのラインナップを拡充しました。また、ミニショベルの5ブランド展開など、欧・米を軸としたCNHルートへのOEM製品供給量の拡大により、更なる収益基盤強化へ取り組みました。
■ 国内事業
フロービジネスでは、高まる環境ニーズに対応して、業界初のオートアイドルストップ機能付き油圧ショベルを独自開発し、また、需要が旺盛な環境リサイクル分野においては、ホイール式スクラップローダや自動車リサイクル関連メニューなど、独創的な高付加価値商品を市場へ投入した結果、国内新車需要が拡大する中、油圧ショベルにおいてシェア15%を達成することができました。
また、基本性能や国際商品としての付加価値をより一層高めた、新型ミニショベル「ビートル」シリーズ(全6機種)のフルモデルチェンジにも注力致しました。2004年5月より国内販売をスタートさせ、年度内を目処に順次、グローバルモデルとして全世界へ供給を開始する予定です。
さらに、ストックビジネスによる収益力向上を目的に、中古建設機械事業を専門的に運営する新会社「コベルコ建機インターナショナルトレーディング(株)」を設立致しました。その結果、海外自社ネットワークを活用して中古車取り扱い量を拡大させるとともに、中古車価格の改善が図れました。
これらの取り組みにより、2003年度のショベル事業の売上高は、約1,592億円(前年度比14.6%増)となりました。
<クレーン事業について>
2003年度は、クレーンビジネスのグローバル展開の基盤強化に向けた施策として、販売・サービス体制の構築と、商品競争力のあるグローバルモデルの開発に注力致しました。
売上高では、特に中国のプロジェクト案件向けや韓国の造船業向けに大型機の販売が好調に推移しました。また新製品開発については、欧州・米国・中国など全世界の環境ニーズに対応できるグローバルモデルとして、新機種120トン吊りクローラクレーンを開発致しました。
また、販売面では、欧米におけるクローラクレーンの販売体制強化の一環として、両地域にクレーン専門の販売会社を設立し、加えて、上海、中近東における販売事務所設立の準備に着手するなど、流通網の整備・強化を図りました。
更には、米国大手クレーンメーカーであるマニトワック社との間で、クレーンメニューの相互OEM供給契約を締結しました。これにより、更なるコスト競争力の向上、グローバル展開など今後のクレーンビジネスの基盤強化へ向けた体制が整います。2004年度よりマニトワック社の米州市場向けにクローラクレーンのOEM供給(対象機種:吊り上げ能力135トン以下の4モデル)を開始し、2005年初頭からは日本へオールテレーンクレーンを導入してホイール系クレーンメニューのラインアップの拡充を図ります。
これらの取り組みにより、2003年度のクレーン事業の売上高は、約248億円(前年度比33.9%増)となりました。
2004年度からは、当社のショベル事業とクレーン事業をそれぞれ独立会社に分割し、コベルコ建機と新会社「コベルコクレーン(株)」の両社が、独自オペレーションにより、経営のスピードアップを図りながら、更なる収益拡大・企業価値の向上を追求していきます。
コベルコ建機としては、調達力強化ならびに開発・生産性向上による顧客への安定供給を常に念頭に置きながら、世界の建機市場におけるプレゼンスをより一層高めていき、存在感ある企業体への進化を目指して参ります。
<重点取り組み課題>
○ |
新型ミニショベル「ビートル」シリーズの早期市場浸透、グローバル展開 |
○ |
中国市場での事業収益の拡大とリスク管理の徹底
|
|
(1) |
中国第2生産工場(浙江省杭州市)の円滑な立上げ
<2005年1月稼働開始予定> |
(2) |
合弁事業パートナーとの連携による製販一体運営、経営管理機能の強化 |
(3) |
マーケットの拡大に対応した生産・販売・サービス体制の拡充、ブランド力の向上
⇒サービス体制(サービスセンター3拠点、サービスステーション9拠点)の整備 |
○ |
調達コスト上昇の影響ミニマイズ化へ向けた調達力強化、コストダウン活動の推進 |
○ |
CNHとの提携効果の最大化 イタリア合弁会社「フィアット コベルコ」への技術供与による現地生産の拡大
|
○ |
伸びる市場への積極展開 東南アジアでの中古車を軸とした事業展開 |
○ |
伸長著しい環境リサイクル分野(金属、解体)への経営資源の投入、産廃分野への新規参入 |
○ |
レンタル、中古車、サービス部門の一体運営によるライフサイクルビジネスの展開 |
○ |
コベルコクレーンとの技術融合、情報共有化などによるシナジー効果の追求 |
<2004年度通期の見通し>
前述の通り、ショベル事業とクレーン事業に分割したことにより、2004年度の当社業績予想には、コベルコクレーン(株)の業績見通し(連結売上高:280億円、連結経常利益:1.2億円)を含んでおりません。
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売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
当期純利益 |
連 結 |
186,000
(+1.1%) |
8,700
(+7.8%) |
7,500
(+22.0%)
|
3,800
(+34.6%) |
単 体 |
110,000
(△14.4%) |
4,600
(+17.6%) |
4,600
(+39.9%) |
2,600
(+22.6%) |
*2004年度における為替レート前提:1米ドル=107.5円、1ユーロ=130円 |
以上
○決算発表関連資料はこちら
◇決算短信(連結・単体)へ
社 名 |
コベルコ建機株式会社 |
英 社 名 |
KOBELCO CONSTRUCTION MACHINERY CO.,LTD. |
創 立 |
1999年10月1日 |
本社所在地 |
東京本社:東京都品川区東五反田2-17-1
TEL 03-5789-2111(代表) |
資 本 金 |
160億円
(株)神戸製鋼所 80%、CNHグループ 20% |
代表取締役 |
島田 博夫(しまだ ひろお) |
事業内容 |
建設機械、運搬機械の製造、販売並びにサービス |